意外な一面

派出所に連れて行かれ、調書を取った後現れたなぞの2人の男達。
彼らを伴ってホテルに戻る僕。
まるで「容疑者」


さて。警察官に再びパトカーに乗せられ、ホテルに戻る。
道すがら付き添いの警察官に


彼らはなに?ときくと
「しんしゃぁどぅい」
という返事。


「え?もういちど」
「しんさゃぁどぅい!!」(天津訛がきつくなる)
「はぁ、、、」


盛んに聞いても返事が理解できないワタクシ。仕方ないから書いてもらいました。


「刑事隊」


ようやく理解できましたわ。しんしゃぁどぅい、けいじたい、やっぱ日本語とは違いますね。
音読みだけでは通じません。わかりません。


日本なら盗難届書いて出して終わりだと思いきや、警察は2人くるし、刑事も2人来るしなかなかVIPな対応です。
ホテルについたら、全員の到着を待ち、ホテルの部屋に案内しました。
刑事はやはり2人、一人はやせてて精悍な感じ。刑事Aとしましょう。
もう一人はちょっとごつい感じ。凄い訛ってる。刑事Bとしましょう。
僕の大切なお金が戻ってくるかは彼らの腕にかかっているわけです。


部屋に着いてかぎを開けると刑事Aにおもむろに


「これから君はここに入ってはいけない」


といわれ、えらいごっついカメラできたない僕の部屋をぱしぱし撮り始めた。
洗濯物を片付けていなかったせいで部屋はぐちゃぐちゃ。
勘弁してくれよ、、、と思いながらも遠慮なくぱしぱしとりつづける。
ぱしぱし。
一通り撮ったら
「入っていいぞ。そこにすわってよし」
と言われるのでしかたなく従います。自分の部屋なのに。


そしてこのあと、刑事ドラマのような光景が・・・


そう!
指紋とる粉!!
もってきたんですよ、彼ら。


お金が入っていた引出しのあたりにぱふぱふ粉を振り掛けていく。
すると見る見るうちに指紋らしきものが浮き上がってくるではないですか。
ほぉぉぉ、、、、と思ってみていると、隣の警察官も興味深そうに見ている。
そして次の瞬間、刑事Aの一言。
「君は、、、、左利きかね?」
おもわず
「え?」
と言ったまま固まり隣の警察官と目を丸くしていると
「左手をよくつかうね」
と続けてきたので
「なぜわかるんですか」
と聞いてみる。刑事A、鼻が高くなる。すると刑事Bがすかさず、
「そんなこと、いえるわけないじゃろー」
とこってこての天津(ちょっと北気味)弁でわりこんできた。
いいじゃんべつに。関係ないんだからさ。


刑事は銀粉を引き出しにつけて指紋を探しつづける。
僕と警察官は子供のように目をキラキラさせて食い入るように彼の手つきを見ている。
刑事はわれわれを見て
「なに、面白いか」
とやや得意そうに言われるので
「うん、みたことないし」
と正直にいってみました。
「見てもいいよ」
と得意げに言われたので遠慮なく近づいてみることにしました。
引出しの表面には指紋がいっぱい。
けっこうたくさんついている。


「ほら、わかっただろ?」
と刑事Aが言い出した。
何が?とおもっていると「左利きだって分かった理由がわかっただろ」、ということらしいです。
「わかんない」
と答えると得意げに説明しだした。
「ほら、君はここに座ってパソコンをいじっているよね。で、引出しを開けるとき、左手を良く使うだろ?だって引出しの左の部分にたくさん指紋がついているじゃないか、ほら。」
「なーるほど〜」
確かに引き出しの左半分にはやたらたくさんの指紋がついている。
僕も警察官もびっくり。刑事Aはもっと鼻を高くしてぱふぱふを続けました。
机のほぼ全面に銀粉が塗られました。


一通り終わると怪しい指紋をセロテープで写し、別の紙に貼り付け、持って帰れるようにしました。
といっても2個くらいです。あんなに銀粉撒き散らして2個だけかよ、とちょっと不満。
そしてお金が入っていたのと同じタイプの封筒とその他机の中に入っていたものをとりだし、
「証拠として持って帰っていいか?」
と聞いてきました。
別にいいよ、というと、おもむろにきょろきょろし始めました。
そしておもむろに


「あれ、もらっていいか」


と指を指したのは床に落ちていたビニール袋!
しかもそれは露天で買ったDVDが入っていためちゃめちゃ汚いビニール袋。
中も外も気合の入った汚れ方。
拭いても取れない中国のちりがまぶされた袋。
いいのかこれで?と思ったけど、
「いいですけど、汚いですよ」
「いや、問題ない」
といい、
「こうやって拭くんだ」
といって拭き始めました。べつに、なんてことは無く、手にはめた白い手袋でさすっているだけです。
そして、汚い袋を拭いた手袋のまま証拠品の封筒をつかんでその袋に入れて満足そうににこっとしました。




あいやー




と心の中でつぶやきました。きっとあれ、帰ったら捨てちゃうんだろうな。
建前大好き中国人。
やることはやったぞ、というこの感じ。やはり日本とは違って独特です。
で、最後にとっても余計なことを言われました。


「おまえの部屋、ほんと汚いな。彼女よく怒らなかったな。」


うるさいって。だまって指紋でも眺めてろって。


このとき、もう19時になっていました。そろそろうだってきた〜