ハテルマ2日目

  • さわやかな道、星空観測センター

 前日11時半くらいには寝れたはずなので朝から元気良く、久しぶりの朝食も食べ、部屋に戻り颯爽と着替えて自転車を借りに行きました。
雨の予報とはうらはらに照りつける太陽がとてもまぶしく自転車でまわるには絶好の日和です。とりあえずこの島の「最南端」に行ってみることにしました。なにしろ日本の有人島としては最南端なんだし、「とりあえず行ってみよう」なんておんなじようなことを考える人もいてちょっとくらいおしゃべりしたりできるかなぁという淡い期待を持ちつつ自転車をこぎ出しました。自転車ですぐの所に昔の見張り台があったのでちょっと登ってみました。たった5mの見張り台なのに島中が見渡せるようなき分です。まるで島を上から見ているようなそんな大きな気持ちになります。270℃くらいは水平線に囲まれていて、ああ、やっぱり島なんだなぁとこのときにやっとわかったような気がします。
見張台を降りて自転車をこぐこと15分、右も左もサトウキビ畑ばかり。ざわざわ音を立てながらまったく変わらない景色が延々と続いていきます。それが割と大きな道でもってちょっと途切れたところに「最南端」がありました。ココが最南端、という碑があって東屋があります。そこで休もう、と自転車をおりて押していったらなぜか急におなかが痛くなりました。「なんだろう、なぜだろう」、と思いつつ、最南端の碑からすぐの星空観測センターにトイレを借りに行くことにしました。よくよく考えれば星空観測センターなんて夜しかやっていないような場所だろうけれども、その時はそんなことを考える余裕も無く、一心不乱にドアを押してみるとおもいのほかすっと開いて中に入ることができました。
ひんやりした観測センターの中は暗く、奥のほうに人がいました。ちょっと暗い感じのその人に恐る恐る声を掛けてみます。
「トイレ、お借りできますか?」
その人は言葉も少なく、指でトイレのほうを指していいよ、と合図してくれました。トイレに入り、出るものが出て、心の中で「アー助かったー」とため息をどっぷり吐き出していると、三線の音が耳に入ってきました。ずっと流れていただろうニそんなのも耳に入らないくらい切羽詰っていたようです。「ああ、休みの時でも沖縄っぽく三線のテープ流しているんだな」、と思ってその時は聞いていました。
トイレを出てから観測センターの人に声を掛け御礼を言って、再び自転車に乗って最南端の碑に行きました。単にトイレを借りただけでしたがこれがあとあと面白いことになったのです。

  • 最南端

最南端にはすでに2人ほど人がいました。やっぱりこの島に来たらここに来るのでしょう。東屋には女性の観光客らしい人が1人、黒く焼けた現地の方のような人が1人、最果てのさらに南の海を眺めていました。その辺の写真を撮ってから東屋に行くとすでに女性はいなくなっていて、その現地の方っぽいひとだけが残っていました。僕が東屋のベンチに座るとおもむろに話しかけてきました。
「かばんを(自転車の)かごにおいとくなよぉ」
「え?」
「からすに注意ってみなかったかぁ?光るものを巣にもってかえってしまうんだから」
そういえばそんな看板もあったかと思い、急いでカバンをとりに行きました。カバンをとって帰ってきてしばらくすると別のお客さんの自転車のかごからパンフレットを強奪していくカラスがいたので、ああ、ほんとだ、と思いました。
にしてもこの人、サングラスかけて帽子かぶって真っ黒に焼けていて、でも汚れた作業着に身を包み、前歯の抜けた顔で「にやぁ」っとしながらえんえんとだらだらしゃべる・・・
どうしても「アヤシイ人」というイメージが抜けない。だから足早に去って早くどこかで本でも読んでゆっくりしよう、と思いました。立ち去るタイミングを計っていると、彼は暇そうにどんどん話しかけてきます。気づくと40分くらい話し込んでいて、話の流れで良い天気だから午後から泳ごう!ということになってしまいました。このときまだ10時、浜まで泳ぐ用意して自転車で走っていっても30分くらいの距離だから本当にのんびりした話です。でもそののんびりペースがやや疲れ気味だった自分の頭にしっくり来たせいか心地よく、一緒にいても平気かなぁ、と思えるようになりました。
その人と自転車で島の外周道路をゆーっくりゆーっくり、サトウキビ畑やモチキビの畑が広がる島の農地のわき道をゆーっくりゆーっくり、自転車で走りながら島のことについていろいろお話をしてくれました。

  • 「くまのみ」

くまのみというのは観光客向けにいろいろなものをレンタルしているお店です。沖縄の古来の家ですが部分部分とってもカラフルでかわいい店構え。まずはそこに連れてってもらいました。

  • ニシ浜

顔を上げるとイチがこっちにおいでおいでしながら
「ほれ、ここー」
とにやぁっとして呼ばれたのでいってみるとなんとクマノミがいました。
はじめて見ますクマノミ。かわゆい。ほんとかわゆい。
こんなに小さなものだとは思わなかったです。磯巾着の中に入ったり外に出たり気ぜわしく動いています。それもそのはず、イチがしきりにイソギンチャクを指で突っついてかき混ぜているからです。

くまのみさんのおばさんがあんまりにもしんどそうだったのとあまりに暇だったので草むしりを手伝ってみました。きれいな花も咲いていたけどおばさんに聞いたら
「あぁ、全部とって全部とって」
とめんどくさそうに言いながらキレイな花でも雑草でも一緒くたに刈り取っていました。お言葉に甘えて何も考えず全部引っこ抜いていくことにしました。にしても草をむしるのなんていつ振りなんでしょう。根っこからとろうと思うとぶちっと切れてほのかに香る緑の匂いがなんともなつかしかったです。ただ、うちの庭の緑の匂いとはちょっとちがってハーブみたいなシゲキがちょっと有る匂いがしました。その匂いがまたなんとも涼しく、こんな草むしりでも内地とこんなに違うものかと調子に乗ってどんどんむしっていきました。そうして草を抜いていくとその裏からたくさんカタツムリのからが出てきます。
「かたつむりの殻、多いですね」
とおばさんに聞いたら、
「ねぇ、、どうしてこんなにカタツムリ多いんでしょうね〜カタツムリって殻を換わるんだっけ?」
なんて聞いてくるもんだから
「いやいや、ヤドカリが乗り換えた殻を捨てていくんじゃないですか?」
なんて言って見たら
「うーん、それもあるなぁ」
とご納得、でもなんかちがうなぁ、と首をひねりながらまた草むしりを続けていました。


この後雨が降ってきたのでくまのみのお庭のパラソルの下で星空観測センターの哲さんとイチともうひとりの人とご主人とがみんな集まってビールを片手に他愛も無い話をしていました。そうこうしているうちに夕飯の時間になったので又来るよ、と言ったらイチが「誰か連れてこいよ、8時に郵便局の前な」と言ってきたので「うんわかった、誰か連れて8時な」と返事しました。

約束どおり8時(正確には5分過ぎ)
「ごめん、まったか??どんくらいまったか」と妙に気遣いをしながらイチが登場。沖縄時間とか言うくらいだから時間にはルーズかと思いきやとても正確にきてくれます。自転車で民宿「たましろ」に向かいました。

  • サトウキビ畑の真ん中で

<編集中>