「塔」

自宅のベッドはちょっと汗で湿っていて、いつもどおりの朝だった。
窓から差し込む夏の日はいつものようにまぶしくて、でもいつもよりちょっとまぶしく感じるのはあの部屋が暗かったせいだと思った。


外に出て学校に行く。今日から入学までの間、補修を受けないといけない。
漢字を勉強したり、数学を勉強したり。
久しぶりに友達に会えるのでかなり楽しみにしていた。
シャワーを浴び、一通り着替え、家を出た。
今日は家の人たちはみんな外出なので鍵をかけて家を出た。


家を出ると駅までの道は延々と下り坂である。
下り坂をかけていく。小学校の頃を思い出す。
ある時間に来る電車に乗らないと友達と一緒に登校できない。
だからいつも走った。
行きは楽だった。下り坂だから。でも帰りは大変だった。上り坂だから。
だから学校でつらいことがあって帰ってくるときは帰り道の坂で余計にしずんで家に帰った。
そんなことを思い出しながら歩く。


駅と家と、ちょうど半分くらいのところに質屋があった。
今は花屋になっていて、雰囲気が変わっていた。整形外科の建物は取り壊され、コンビニになっていた。その向かいにあった英会話学校はもうつぶれてなくなっていて・・・




・・・




そしてまた僕はあの部屋にいた。


[つづく]